モノづくりから経営へ、
思考のシフトで
見えてきた
会社の目指す、その先。
代表取締役社長 鈴木友介
──社長も以前は現場に入って作業をされてたことがあると伺いました。
「入社してからずっと現場でモノ作りをしてました。作らなくなったのここ3年ぐらいです。私が入ったときに男性は会長と専務、あと女性数人という中で、仕事を取ってくるところから一通り経験してきてます。皆、私が現場で作ってるイメージは、まだあるんじゃないですか。今は会社の経営に力を注いでます」
──まさに従業員さんのインタビューの中でも、ちゃんと現場をわかってくれてるから話しやすいっていう声がありました。
「最初は本当に小さい会社だったんで、人員が足りない、でもこの案件はやるしかないっていう状況の中、役員で労働管理外だったから徹夜とかもざらにやってました。仲間が増えてきたら今度はその人たちに教えていって自分の負荷を減らしていく。なんとなく皆に任せてもいいかなって形にしてから現場からは抜けました。多分、会長(前社長)もそう思ったタイミングで現場から抜けていきました。ようやく、人に仕事を振れるようになって、やっと自分も経営側として物事を考えられる余裕ができました。自分が現場で作ってるときって本当余裕がないです。決められた納期が間に合うかどうかって事で精一杯で。
今は逆に現場から抜けた事で、仕事してないと思う従業員もいるんですよ。パソコンばっかりいじってるとか思われてます。長く勤務いただいている方々からは、最近現場にも来ないって言う声が聞こえてきて、自分の中にそこもギャップがありました。
でも、このままずっと現場で製品を作ってたら経営の事ができないから、皆にお願いって感じで割り切りました」
──社長として従業員にこういうふうにしなきゃいけないとか、何か葛藤する事はありますか。
「従業員の皆さんにしてあげたい事はいっぱいあって、福利厚生も含めてもうちょっと整備したいんですけど、じゃあどうするってなったときやっぱり会社の利益を出す、そこを先にやってから次にと思ってます。その順番を履き違えてはいけないなっていうのはあります。例えばこのコロナ禍で従業員の方々へ手当を出して喜んでいただけるのは良い事と思いますが、でも会社を継続していかなければならないですし葛藤はあります。
私は利潤を追求してそれを最大限みんなに還元するっていう芯があって、でもそのためには多少嫌われたとしても、シビアにドライになる部分も自分には必要っていうのが最近感じてまして、そこが今後の課題と考えてます。
会社に利益が出れば沢山ボーナスあげたい思いもあります。そのためにも会社が利益を生むような仕組みを作るのが経営者だから、それを実現するのに何が必要だろうと考えます。その利益追求の伝え方とか、それに伴って厳しい指示を出さざるを得ない場面があります。今まで現場でモノを作ってたからわかりますが、今これやれって言われたら大変だろうなって思う時もあって、つい指示を躊躇したり妥協したりしてしまいます。ただ結果にコミットして動いてもらうっていうのを強く意識して経営していかなければいけないと最近思ってます」
ともに働く従業員の皆さんに
してあげたいことは
いっぱいある、だからこそ
会社の利益を追求したい。
──女性の方が多い職場ですが、社長からみてどうですか。
「皆さんには頑張っていただいてます。うちの女性の方は集中力がすごくて、モノづくりに向いている方が多いと思います。色々なタイプの方がいて、仕事も実務もできて気が強いって言うと語弊かもしれないけど、気合が入ってて周りも一目置いてるような方もいらっしゃいますし、会社としても頼りになります。
30代・40代の方も多いので、これから女性の管理職としても会社の成長と共に活躍していただきたいと思っております」
──気持ち的に負けそうになる事はありませんか。
「いっぱいありますよ。入った頃から、社長の息子だからって容赦してはもらえない事もありましたが、今はいい関係性です。先輩方にだいぶ厳しく指導されました。負けたくなかったですね。何も知らない・できないのに指示を出すのかと思われる事もありました。それなら自分はもう作れるようになるしかないと思い、入って7年ぐらいはモノ作りに専念しトコトン追求しました。
10年やってきて、まあ10年って数字で見るとそんなに長くはないんですけど、すごく昔のようにも感じます。すごい速度でいろいろ変わってますし、会社も引っ越し2回してますから」
──もうずっと突っ走ってるような感じですね。
「今、代表になってなおさらですけど、基本的に会社の成長を止めないこと、そこは誰にも負けたくないという気持ちでいます」
──今後、社長として会社をどんなふうにしていきたいと思っていますか。
「例えば、長いお付き合いの取引先でも上層部の人員が変わったりすれば、その方々の考え方次第で私どもの足元ってどうにでもなると思います。まずはそこを常に読み取って考えていく。その一方で、この製造業っていうものを、もうちょっと間口広げて行きたいという思いもあります。まずはしっかりその足元の基盤整備と、相手にとって利用価値がある、必要とされる会社であるかどうかを考えていきたいです」
──そうやって一緒に協力し合えるような企業ですね。
「そこで『鈴弘精工』を選んでもらえるように、そのために準備をする。上場企業の大きな会社と関りをもつ中で、例えばDX化の話なんかはもう全然規模が違う、もう天と地ほどの差があるわけです。資金面との兼ね合いもありますけど、その対応がなかなか形にできなくても、せめて意思を見せていくというか、何も伸びなさそうだなって思われるような会社にはしたくありませんでした。
『鈴弘精工』は何かこう期待感あるね、と思わせるように動いてないと駄目だ思ってます。スケール自体はまだまだ小さいのかもしれないですけど、今現在、今必要な事、そこをしっかりと形づけたいと思いながら、ある程度の期間そういう気持ちでやってきたという感じです」
何も伸びなさそうだなって
思われるような会社には
したくなかったし、
働く人のためにも
会社の基礎力は鍛えたい。
──きちんと足元を見ながら常にどこへ向かうべきか軌道修正できるっていうのは、柔軟な社長さんなんだなと思います。
「そう言ってもらうとありがたいです。柔軟というか弱さでもあると思います。ちょっとそこは半分弱さなのかもしれないです。今やってることにその都度テコ入れする方がどうしても手を付けやすくて、例えば、ガラッと新しい取引先から仕事を取るって、本当に鉄の意志だったらそう動いてるはずです。そこが具現化できないとかツテがないと何か言い訳を言ってるのは、まだ自分の中で動機が弱いって事だと思います。冷静にそこも含めてですけど、やるべき事を見つけていきながら、基礎をしっかり押さえた上で、運用は10年ぐらいの単位で流れを見ていきたいと思ってます。まずは基礎がしっかりできるようにしていきたいです」
──10年後はそれこそ従業員数も倍ぐらいになってるかもしれないですね。
「そうですね、人が増えている可能性もありますし、逆に減ってるかもしれない。減ってるっていうのは、例えば機械化に伴って変わっていったりするかもしれない。いずれにしても今もこれからも人が一番重要なのは変わりません。採用に際しては、その人をいつまで雇用できるかってことは大事にしています。
いざというとき人材で困らないようにという意味でも、会社の基礎力は大事です。会社の力が小さければ小さいほど人は来ないと思ってます。これからは給料や福利厚生の部分で不利があれば、どんどん雇用しづらくなるだろうと感じてます。あと、『鈴弘精工』を知ってもらうための情報公開を積極的に行っていく事ですね。ホームページもそうですけど、ハローワークの求人だけで人材をまかなう時代ではありませんし、情報の質や量が人材の確保にも直結する時代だと感じていますのでその時代に合った取り組みを柔軟に行っていきたいですね」